公益財団法人 新潟県保健衛生センター

健康げんきエッセイ(2)血管を休ませて

健康エッセイ

血圧は200でもかまわない!? 中高年世代は活字大好き 

 あるクリニックの先生、患者さんが「血圧は200でも心配するな」という週刊誌を読み、薬をさぼり始めたと嘆いていました。

若者は活字離れが進んでいるそうですが、インターネットがない時代に青春を過ごした中高年世代は活字が大好きですよね。

「本に酒は体に悪いと書いてあったので、本を読むのをやめた」というジョークを聞いたことがありますが、私は「血圧の薬は体に悪いと書いてあったので、本を読むのをやめた」をお薦めしますよ。ブラボー、中高年!

中高年世代は噴水もお好き?

上の血圧が200といっても、ピンと来ないかもしれませんね。

水銀血圧計を思い出してください。

腕に巻いたカフ(袋のおび)に空気を送り込むと、シュッ、シュッと水銀が昇っていきますね。十分に空気を送り込み、血流がいったん止まったら圧を下げ始め、血流が再開したときの圧が上の血圧です。水銀柱の高さが200ミリだったら、上の血圧200ということになります。

さて、中学校理科の復習です。比重は水が1、水銀は13.53です。3倍以上重い水銀を200ミリ(20センチ)押し上げる圧力がかかると、水は13.53×20cm=270.6センチの高さまで噴き上がります。

私が好きな新潟市西海岸公園の噴水はせいぜい3メートルでしょうか。

上の血圧が200の人は、噴水を吹き上げるポンプと同じ圧力で血管壁が絶えず押されているのです。公園の噴水は季節や時間で適当に休みます。体の中の噴水も、ほどほどの圧力に調整して、緊張が続く血管を休ませてあげてくださいね。

手首を使うな、血圧測定と私のゴルフ

 高血圧治療ガイドラインは、電子血圧計で家庭血圧を測定することを勧めています。40年ほど前、信頼できる電子血圧計は百万円以上と高価でしたが、現在は数千円~1万円前後で手に入ります。必ず、腕で測る血圧計を購入してください。

 上腕は動脈が1本しかないので、簡単に血流が止まりますが、手首は動脈が2本あるうえ硬いじん帯で守られており、安定した血圧測定が難しいのです。

 手首で安定しないといえば私の下手なゴルフ。手首をこねてしまうので、ボールは左右に散らばり、お陰で歩数はうまい人の倍以上に。健康には役立っているかもです。

 「年寄り(私)を差別するな!」「差別でなく区別です」

 ガイドラインは、74歳以下は上の血圧を130未満に下げるよう勧めていますが、後期高齢者(75歳以上)は140未満とゆるい目標になっています。75歳で差別、いや区別しているのです。もっとも、体力など人それぞれですから、体の状態も考慮する必要があります。血圧の薬を飲む理由は、数年にわたる生活の質を下げないためですから、フレイル(虚弱)や介護が必要な人は、薬を中止する場合もあるとガイドラインには書いてあります。

健診とかかりつけ医が大切

なんやかんや言っても、健診を受け、良いかかりつけ医がいればひと安心ですよ。

 

この記事を書いた人

副会長 医師

内山 聖